「認知症の親御様の遺言は、有効に残せるのか」という不安は、多くの子世代の方が持たれているのではないでしょうか。

認知症と診断されていても、遺言の作成自体は自由です。

ただし、その遺言が将来「有効」と認められるかは、作成時の「遺言能力」によって個別に判断されます

そこで本記事では、以下についてわかりやすく解説していきます。

  • 遺言の有効性に関する法的な条件は?
  • 認知症の方の遺言能力はどうなる?
  • 遺言の作成において気をつけるべきポイント
  • 遺言以外にも重要な生前対策

これから遺言を作成する方、すでに作成済みの方、ご家族の遺言が手元にある方のいずれにも、次に着手すべきことが明確になるようわかりやすく解説していきます。

認知症のご家族の遺言でお悩みの方へ

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「親が認知症だが、有効な遺言を残せるのか」
「すでに作成済みの遺言の有効性は、どのように判断されるのか」
など、認知症と遺言にまつわるご相談を多くいただきます。

遺言の有効性は作成時の状況により個別に判断されるため、ご家族だけでの判断が難しいケースも少なくありません。

おやとこでは、遺言・相続・家族信託など幅広いご相談に対応しております

家族信託契約件数3年連続No.1※の実績で、ご家族に最適な備え方をご提案いたします。

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遺言の有効性は、法的にどう判断される?

法律上、遺言の有効性は主に次の2つの軸で判断されます。

  • 遺言が法律上の方式に従って書かれているかどうか(民法第960条)
  • 作成当時に遺言能力が備わっているか(民法第963条)

特に認知症の方が遺した遺言については、後者の 「作成当時に遺言能力が備わっているか」がポイントとなります。

以降で、その「遺言能力」とは具体的にどのようなことを指すのか、詳しくみていきます。

参考:民法

(遺言の方式)
 第960条 遺言は、この法律の定める方式に従わなければ、することができない。
(遺言能力)
 第961条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
-略-
 第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

出典:e-Gov法令検索

遺言能力とは?認知症でも遺言が認められる2つの判断基準

遺言能力とは「遺言の内容および結果を理解できる程度の意思能力」のことです。

つまり「自分が遺言によって何を決めていて、相続発生時にどうなるのか」を理解できる状態であることが必要となります。

具体的には次の2点が判断軸となります。

  • 満15歳以上であること(民法第961条)
  • 意思能力があること(民法第963条)
遺言能力とは?認知症でも遺言が認められる2つの判断基準

認知症によって、記憶力や判断能力が大きく低下した場合は、遺言能力がないと判断され、その遺言は無効とされる可能性があります。

次に、判断の中核となる「意思能力」の具体的な判断基準をみていきましょう。

意思能力はどう判断する?参考にされる2つの基準

意思能力の有無は、遺言者の状況や遺言の内容など個別具体的な事情を考慮して、総合的に判断されます。

「〇〇テストで◯点以上であれば意思能力がある」といった一律の基準は存在しませんが、実務上参考にされる2つの指標を紹介します。

  • 長谷川式認知症スケール(HDS-R)
  • 遺言の内容の複雑さ

長谷川式認知症スケール(改訂長谷川式簡易知能評価スケール:HDS-R)とは、見当識や記憶力などを口頭質問で測る検査です。

30点満点中20点以下で認知症の疑いが高く、重度では10点前後とされます

ただし、体調や認知症の種類で点数は変動するため、あくまで参考の一指標として扱われています。

意思能力はどう判断する?参考にされる2つの基準

実際の裁判においても、長谷川式認知症スケールの結果を意思能力の判断材料としているケースはあるものの、点数のみによる機械的な判断はしておらず、医師による検査結果を含めた多様な情報の考慮が必要です。

もう一つの軸は「遺言書が遺言者の理解できる程度になっているか」ということです。

遺言の内容が複雑であればあるほど、理解するための高い意思能力を求められることになります。

複雑な遺言の例としては、相続財産に有価証券や複数の不動産が含まれていたり、それぞれの配分割合を定めていたりするケースが挙げられます。

それぞれの配分割合を定めていたりするケース

ここからは、皆さんのご状況に合わせて遺言の取り扱い方法や作成時のポイントをご紹介していきます。

手元にご家族の遺言があるかたはこちら
(ご家族やご自身が)これから遺言を作成される場合はこちら

【手元に遺言書がある方へ】まず確認したい「検認手続き」

ここからは、すでにお手元に遺言書がある方に向けて、その取り扱いのポイントを解説していきます。

遺言書の内容を確かめる前に、まず行うべきなのが検認手続きです。

検認とは、遺言書の偽造や変造を防止するための家庭裁判所における手続きで、遺言の有効性そのものを確認する手続きではありません。

検認手続きが必要となるのは「自筆証書遺言(法務局保管制度を利用した場合を除く)」と「秘密証書遺言」のケースです。

遺言の種類により以下のように分かれます。

遺言の種類検認の要否
自筆証書遺言(自宅等で保管) 必要
自筆証書遺言(法務局保管制度を利用) 不要
秘密証書遺言 必要
公正証書遺言 不要

「公正証書遺言」や自筆証書遺言のうち「法務局保管制度」を利用した場合には検認手続きが不要です。

検認が必要であるにもかかわらず、検認をせずに遺言書を開封した場合、5万円以下の過料が科される可能性があるため、注意しましょう。

まず確認したい「検認手続き」

基本的には、自宅等で遺言書を発見した場合→検認が必要、公証役場や法務局での検索により発見した場合→検認が不要と整理できます。

お手元に遺言があり、検認の必要性が曖昧なケースでは、まず専門家へ相談することをおすすめします。

お手元の遺言書、取扱いに迷っていませんか?

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検認の必要性、執行手続きの進め方、内容への疑問など、お手元の遺言書を前にお困りの方は少なくありません。

遺言書の取扱いは、種類やご家族の状況によって最適な進め方が異なります。

おやとこでは相続発生後の手続きについても、丁寧にサポートしております。

全国から年間1万件以上のお問合せに対応。
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【手元に遺言書がある方へ】遺言の執行はどう進める?4ステップの手順

検認が完了し、遺言書が有効と思われる場合は、遺言の執行に移ります。

一般的な流れは次の4ステップです。

  1. 遺言執行者を確認する
  2. 財産目録を作成する
  3. 預金の解約・登記の変更を行う
  4. 終了報告

遺言の執行では、預金の解約や登記の変更などの手続きを行い、遺言内容を実現していくのが基本的な流れです。

遺言の執行に係る手続きは、遺言執行者が遺言の内容を実現するために単独で進められます(民法第1012条・第1013条)。

遺言執行者は、遺言により指定しておく(民法第1006条)か、本人が亡くなった後に利害関係人が家庭裁判所へ申し立てて選任することも可能です(民法第1010条)。

遺言執行者がいなくても手続き自体は進められますが、銀行や法務局から相続人全員のサインや印鑑証明書を求められ、手続きに手間と時間がかかることがあります。

※遺言の内容に「認知」や「相続人の廃除(特定の相続人に財産を渡さないようにすること)」が含まれている場合は例外で、必ず遺言執行者を選任しなければ手続きができません。

遺言が有効でも「遺留分」に注意:請求できる範囲と割合

遺留分とは、配偶者・子・親など(兄弟姉妹を除く法定相続人)に最低限保障される遺産の取り分です。

遺言で「全財産を親族でない他人に渡す」などの極端な処分から、残された遺族の生活を保障する意味合いがあります。

例えば「(親族ではない)Aさんに全財産を渡す」という遺言があったとしても、配偶者や子どもは遺留分として一定割合の財産額を請求できます。

遺留分の割合は、相続人直系尊属(親・祖父母)のみの場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合は相続財産の2分の1です。

遺言が有効でも「遺留分」に注意:請求できる範囲と割合

なお、遺留分侵害額請求は金銭での請求となるため、不動産等の現物で回収することはできません。

【手元に遺言書がある方へ】遺言が無効かも?解決までの3ステップ

遺言に無効の疑いがある場合や、遺言を撤回したい場合は、以下の流れで進むことが一般的です。

  1. 遺産分割協議
  2. 遺言無効確認調停
  3. 遺言無効確認訴訟
遺言が無効かも?解決までの3ステップ

1.遺産分割協議

まずは遺産分割協議を行い、相続人全員との合意形成を試みます。

相続は必ずしも遺言に従う必要はなく、相続人全員の合意があれば遺言と異なる分割も可能です。

遺産分割協議は、相続人全員の参加・合意が必要ですが、裁判所を通さず当事者間で進められます。

そのため場合によっては、調停・訴訟に先立って協議を行うことは有効な選択肢となるでしょう。

遺産分割協議の成立後は、分割手続きのために遺産分割協議書を作成します。

2.遺言無効確認調停

遺産分割協議がまとまらない場合は、裁判所での遺言無効確認調停・提訴といった手続きを検討することになります。

調停は、協議と同様に話し合いによる解決を目指す方法で、裁判所が選定した調停委員が仲介役として加わる点が異なります。

3.遺言無効確認訴訟

調停でも解決できない場合は、訴訟で裁判所の判断を求めることもあります。

訴訟では原告(遺言の無効を主張する側)に立証責任があり、主張を裏付ける証拠を提示する必要があります。

状況に応じて、弁護士など専門家との並走をご検討ください。

認知症の診断後に遺言書を作成する際の3つのポイント

認知症の方が遺言書を作成する際におさえておきたい3つのポイントをご紹介します。

  1. 公正証書遺言を活用する
  2. できるだけシンプルな内容にする
  3. 意思能力の証明となるものを用意する

それぞれみていきましょう。

1.公正証書遺言を活用する

公正証書遺言は、公証役場にて本人と、2人以上の証人が立ち会いのもとで作成します。

法律の専門家である公証人が関与することで、書式要件の不備リスクを自筆証書遺言より大幅に減らせる点が最大のメリットです。

また、遺言者自ら口頭で内容を述べる必要があるため、遺言能力の証明としても有力な証拠となります。

公正証書遺言を活用する

2.できるだけシンプルな内容にする

遺言の内容をシンプルに保つことで、認知症により判断能力の低下が疑われたケースでも意思能力及び遺言の有効性が認められやすい傾向にあります。

もちろん遺言者本人の希望に沿うことが第一ですが、可能な範囲で複雑な内容は避けるのも一つの選択肢です。

3.意思能力の証明となるものを用意する

遺言作成時に意思能力があったことの客観的な根拠として、以下のような資料を用意しておくことも一つの選択です。

  • 長谷川式認知症スケールの点数
  • 医師の診断書
  • 遺言書作成の様子の録画・録音など

日常生活の会話・意思決定に問題がなかった旨の記録や証言も、後に遺言の有効性が議論される際の参考資料となる可能性があります。

意思能力の証明となるものを用意する

遺言だけでは解決が難しい2つのリスク

遺言は、本人が亡くなった後から効力が発生するため、生前に生じる問題には対応しづらい特性があります

遺言を作成した場合でも、以下のようなリスクについては別途備えておく必要があります。

  1. 認知症による生前の資産凍結リスク
  2. 話し合い不足による相続トラブル

1.認知症による資産凍結リスク

認知症を発症し判断能力を失った場合には、資産の凍結により次のようなことができなくなる可能性があります。

  • 預金の引き出し
  • 定期預金の解約
  • 賃貸不動産の管理
  • 自宅不動産の売却

これらを防ぐには、遺言に加えて、ご本人が認知症により判断能力をなくした後〜相続発生までの期間で、財産を柔軟に動かせるような対策が必要です。

認知症で起こりうるトラブルについて詳しい内容は以下でも解説していますので、ご参考ください。

高齢の親がいる場合「認知症になったらどこに相談すれば良いの?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。認知症に関する相談先は、目的や手段に応じてさまざまです。本記事では、認知症になったときの相談先や起こりうるトラブル、資産凍結に備えた対策などについて詳しく解説します。
親が認知症になったときの相談先9選!起こりうるトラブルや対策も徹底解説

2.話し合い不足による相続トラブル

遺言は、単独行為であるという特性上、誰にも内容を知らせずに残すことができるため、他の相続人が納得できずにトラブルとなる可能性があります。

相続人の中で内容を知らせない・相談しないことは、遺言の改ざんの防止等に役立つかもしれませんが、理由も示されないまま突然相続分割合を突き付けられると不満を感じる人もいるでしょう。

遺言と併せて考えたい3つの生前対策

生前対策には遺言以外にも多くの選択肢があります。上述の課題の対処につながる代表的な3つの生前対策をご紹介します。

  • 家族信託
  • 成年後見制度
  • 生前贈与

いずれの制度も遺言と併せて利用することができ、既に遺言を作成済みの方にも有効な選択肢です。

1.家族信託

家族信託とは、本人の財産の管理・運用・処分等を家族へ託す仕組みです。

認知症による資産凍結の対策ができる制度で、財産の管理処分の自由度や家族の意思反映度の高さが特徴として挙げられます。

また、遺言では指定できない 「複数世代に渡っての財産承継」について定められることも特徴です。

一方、信託契約という契約による制度のため、意思能力の喪失後は利用できない(契約行為ができないため)というデメリットも存在します。

家族信託について、詳しくは以下の記事やガイドブックをご覧ください。

→無料で家族信託ガイドブックをみてみる
家族信託は「認知症による資産凍結」を防ぐ仕組みです。本記事では家族信託の詳細や具体的なメリット・デメリット、発生する費用などについて詳しく解説します。将来認知症を発症しても、親子ともに安心できる未来を実現しましょう。
家族信託とは?仕組みやメリット・デメリットを専門家がわかりやすく解説

成年後見制度

成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が低下した方を保護・支援するための公的制度です。

成年後見制度

後見開始の申立てにより家庭裁判所が選任した後見人が、本人に代わり契約や財産管理を行うことで、資産の完全な凍結を防ぐことができます。

判断能力を失った後でも利用できる点は、他制度にないメリットですが、家族信託と比較すると費用や財産管理の自由度といった面でデメリットも多く、よく検討して利用判断をしたいところです。

詳しくは専門家への相談がおすすめです。

成年後見制度については、以下の記事で詳しく解説しています。

成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した人の法的な行為や財産管理のサポートを行う制度です。本記事では具体的な制度の内容や費用はいくらかかるのか、利用する流れ、認知症対策として注目の家族信託との違いをわかりやすく解説します。
【保存版】成年後見制度とは?仕組みや注意点をわかりやすく解説します

生前贈与

生前贈与とは、生前から自己の財産を無償で渡していく方法です。

生前贈与のメリット・デメリットは次のとおりです。

メリット

  • 生きているうちに、確実に思い通りの財産承継をできる
  • 年間110万円の非課税枠を活用して、相続税の計算に含まれる財産を圧縮できる

デメリット

  • 贈与契約が必要なため、意思能力喪失後は実行できない
  • 生前贈与加算(相続税法第19条)というルールにより、相続開始前7年以内の贈与財産は相続財産に持ち戻して相続税の計算が行われる(※)

(なお、2024年1月1日以降の贈与から段階的に延長され、完全7年加算となるのは2031年以降の相続です。出典:令和5年度税制改正のあらまし|国税庁

生前贈与

生前贈与について詳しくはこちらの記事でも解説しています。

将来的な相続に備えて対策をしたい方は、家族信託と生前贈与のどちらを利用するか迷われている方も多いでしょう。本記事では、家族信託と生前贈与の違いや、家族信託を活用した暦年贈与の可否、制度の相談先などについて詳しく解説します。
家族信託と生前贈与は何が違う?家族信託を活用した暦年贈与の可否も解説

遺言で指定した財産を生前贈与した場合、その部分については遺言が撤回されたものとみなされます。

よって、贈与するたびに遺言を書き直す必要はありません。

ただし、遺言とは異なる人物に贈与するなど、作成済みの遺言との矛盾が生じた場合は、トラブルに発展するおそれもあります。

このような事態を避けるという観点では、書き直しがおすすめです。

まとめ

認知症と診断されていても、遺言書を作成すること自体は可能です。

ただし、その遺言が相続発生時に有効と認められるかは、作成時の遺言能力や形式要件によって個別に判断されます。

また、遺言だけですべてのリスクに備えられるわけではありません

本人の希望をできるだけ相続に反映させるためには、遺言作成時の工夫に加えて、遺言以外の生前対策を組み合わせて備えることが大切です。

認知症や相続に関する判断に迷う場面では、専門家へ一度ご相談ください。

家族構成や財産状況に応じた最適な制度の活用や対策を、丁寧にご提案します。

→「家族信託のおやとこ」について詳しくはこちら

認知症と相続、どう備えるかお悩みの方へ

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資産凍結への備え、家族信託と成年後見の選び方、遺言と組み合わせる生前対策など、ご家族の構成・財産・健康状態によって、最適な備え方は一人ひとり異なります。

おやとこでは、まずはじめにご状況を丁寧にお伺いしたうえで、最適な生前対策をご提案しております。

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